1on1ミーティングとは?効果・やり方・成功のポイント完全解説
1on1ミーティングの定義から効果、具体的な進め方、話すテーマ・質問例、成功のポイントまでを網羅的に解説。形骸化を防ぎ、組織の成長を加速させる実践ガイドです。
なぜ今、1on1ミーティングが注目されるのか
「定期的に面談しているのに、部下の本音が見えない」「気づいたら離職の相談をされていた」——こうした経験を持つマネージャーは少なくありません。
従来型の評価面談だけでは、部下の変化に気づけない時代になっています。リモートワークの定着、キャリア観の多様化、そして若手世代の「対話を求める」傾向。これらの変化が重なり、上司と部下が定期的に1対1で対話する 1on1ミーティング への注目が急速に高まっています。
働き方の変化と「対話不足」という構造的課題
オフィスに全員が出社していた時代、上司と部下のコミュニケーションは自然に発生していました。席の横を通りかかったときの「最近どう?」、ランチに一緒に行ったときの何気ない会話。こうした非公式な対話が、信頼関係の土台を築いていたのです。
リモートワークの普及は、この非公式な対話の機会を大幅に削りました。SlackやTeamsでのテキストコミュニケーションは業務連絡には便利ですが、「今ちょっと悩んでいること」「将来のキャリアへの不安」をテキストで切り出すのはハードルが高い。結果として、上司は部下の状態を把握できず、部下は相談相手を失うという構造的な対話不足が生まれています。
さらに、VUCAと呼ばれる変化の激しい事業環境では、半年に一度の評価面談で部下の成長を支えることはもはや不可能です。市場環境は四半期ごとに変わり、プロジェクトの優先順位は月単位で入れ替わる。こうした状況の中で、部下が適切な方向に成長し続けるためには、リアルタイムに近い頻度での対話が不可欠です。
評価面談との決定的な違い
1on1ミーティングと評価面談は、似ているようでまったく異なるものです。
| 項目 | 評価面談 | 1on1ミーティング |
|---|---|---|
| 主体 | 上司(会社側) | 部下 |
| 目的 | 業績評価・目標設定 | 部下の成長支援・課題解決 |
| 頻度 | 半年〜年1回 | 週1回〜月2回 |
| 時間 | 30〜60分 | 15〜30分 |
| 話題 | 業績・目標達成度 | 業務・キャリア・体調・人間関係など幅広い |
| 雰囲気 | フォーマル | カジュアル・安心感重視 |
最も重要な違いは 「誰のための時間か」 という点です。評価面談は会社が社員を評価するための場ですが、1on1ミーティングは部下のために設けられた時間です。部下が話したいことを話し、上司はそれを聴き、必要に応じてサポートする。この「部下主体」の原則が、1on1の根幹をなしています。
1on1ミーティングがもたらす5つの効果
「忙しい中でわざわざ時間を取る意味があるのか」——導入前によく聞かれる疑問です。しかし、1on1を継続的に実施している組織では、以下の5つの効果が繰り返し報告されています。
信頼関係の構築と心理的安全性の向上
定期的に「あなたの話を聴く時間」を確保すること自体が、部下への強いメッセージになります。「この上司は自分に関心を持ってくれている」という実感は、心理的安全性の土台です。
Googleが実施した社内調査プロジェクト「Project Aristotle」では、チームの生産性を最も左右する要因として 心理的安全性 が挙げられました。1on1は、この心理的安全性を個人レベルで育む最も直接的な手段です。週に15分、上司が部下の話に集中する時間を持つだけで、「何を言っても大丈夫」という安心感が少しずつ醸成されていきます。
離職防止とエンゲージメント向上
退職理由の上位に常に挙がるのが「上司との関係」です。逆に言えば、上司との良好な関係は最も強力なリテンション要因のひとつ。1on1ミーティングを通じて部下の不満や不安を早期にキャッチできれば、問題が深刻化する前に手を打てます。
「辞めたい」と決意してからでは遅い。その手前にある「ちょっとモヤモヤしている」「最近キャリアについて考えている」という微細なサインを拾えるのは、定期的な1on1だけです。
部下の自律的成長とキャリア開発
1on1のもうひとつの重要な効果は、部下の内省を促すことです。上司が答えを与えるのではなく、問いかけを通じて部下自身に考えさせる。このプロセスを繰り返すことで、部下は自ら課題を発見し、解決策を考え、行動に移す力を身につけていきます。
コーチングの世界では、これを「自走できる人材の育成」と呼びます。指示待ちの部下を変えたいなら、指示の仕方を変えるのではなく、対話の仕方を変える。1on1は、その対話の場として最適です。コーチングスキルの基本を身につけた上司であれば、この効果はさらに大きくなります。
業務改善のスピードアップ
部下が現場で感じている課題や改善アイデアは、日常業務の中では上司に届きにくいものです。会議で発言するには心理的ハードルが高く、チャットで書くには微妙なニュアンスが伝わらない。1on1は、こうした「言いたいけど言えなかった声」を拾い上げる場として機能します。
現場の小さな改善提案が、結果として大きな業務効率化につながるケースは珍しくありません。1on1を通じて上がってきた情報を元に施策を打てば、トップダウンでは見えなかった課題に対処できます。
組織全体のナレッジ蓄積
1on1で交わされる対話には、マニュアルには載らない暗黙知が含まれています。「あのクライアントにはこういうアプローチが効く」「このプロジェクトで失敗した原因はここにあった」——こうした知見は、個人の中に留まっていては組織の資産になりません。
1on1の内容を適切に記録し、チームで共有できる仕組みを整えれば、個人の経験が組織のナレッジに変わります。音声をナレッジ資産として蓄積する方法を組み合わせれば、この効果はさらに高まります。
1on1ミーティングの基本的な進め方【5ステップ】

効果を理解したところで、具体的な進め方を見ていきましょう。初めて1on1を導入する場合でも、以下の5ステップに沿えば迷わず始められます。
ステップ1・2: 事前準備とアジェンダ設定
ステップ1: 目的と期待値の共有
1on1を始める前に、部下と「この時間は何のためにあるのか」を共有します。「あなたのための時間であり、評価には直接関係しない」「話したいことを自由に話してほしい」というメッセージを、最初の1on1で明確に伝えましょう。
ここを省略すると、部下は「また面談か」「何を話せばいいかわからない」と感じ、最初から消極的になってしまいます。
ステップ2: アジェンダの事前共有
1on1の前日までに、部下からアジェンダ(話したいテーマ)を出してもらいます。形式は自由で構いません。Slackで箇条書きを送ってもらう、共有ドキュメントに書き込んでもらう、どちらでもOKです。
重要なのは、部下が「何を話すか考える時間」を持つことです。1on1の場で初めて「何かある?」と聞いても、とっさに出てくるのは表面的な話題だけ。事前に考えてもらうことで、対話の質が格段に上がります。
ステップ3・4: 対話の実施とフィードバック
ステップ3: アイスブレイクから始める
いきなり本題に入らず、最初の2〜3分は雑談に使います。「週末どうだった?」「最近ハマっていることある?」など、業務と関係ない話題から始めることで、部下の緊張がほぐれます。
ポイントは、上司も自己開示をすること。自分の失敗談や最近の出来事を軽く共有すると、部下も話しやすくなります。
ステップ4: 傾聴とフィードバック
アイスブレイク後は、部下のアジェンダに沿って対話を進めます。ここで上司に求められるのは 「聴く力」 です。
- 部下が話している間は遮らない
- 相づちやうなずきで「聴いている」ことを示す
- 「それは具体的にはどういうこと?」と深掘りする質問を投げる
- アドバイスを求められるまで、自分の意見は控える
理想的な発話比率は 部下8:上司2 です。上司が話しすぎていると感じたら、意識的に口を閉じて相手の言葉を待ちましょう。
ステップ5: ネクストアクションと記録
1on1の終わりには、必ず ネクストアクション を確認します。「今日話した内容を踏まえて、次までに何をするか」を部下自身に決めてもらうことが重要です。上司が指示するのではなく、部下が自分でコミットする形にすることで、実行率が大きく変わります。
同時に、対話の内容を記録に残します。テキストメモでも構いませんが、対話のニュアンスまで含めて記録するには限界があります。音声で記録を残し、AIで要約する方法であれば、対話に集中しながらも正確な記録を残すことが可能です。
1on1で話すべきテーマと質問例
「何を話せばいいかわからない」——これは1on1ミーティングにおける最大の課題のひとつです。以下に、テーマ別の具体的な質問例を紹介します。
テーマ別の質問例
業務に関する質問
- 今の業務で一番やりがいを感じていることは?
- 逆に、ストレスや負担を感じている業務はある?
- 今のプロジェクトで困っていること、助けが必要なことは?
- もっとこうしたいのにできていない、ということはある?
- 今の業務量は適切だと感じる?
キャリアに関する質問
- 半年後、1年後にどんなスキルを身につけたい?
- 今のチームで挑戦してみたいことはある?
- 将来どんな役割を担いたいと思っている?
- 自分の強みと、もっと伸ばしたい部分は何だと思う?
- キャリアについて漠然とでも不安に感じていることはある?
コンディションに関する質問
- 最近の調子はどう?(体調、メンタル両方)
- 十分に休めている? 睡眠の質はどう?
- 仕事以外で気になっていることはある?
- チームの雰囲気について感じていることは?
- 何か変えてほしいこと、改善してほしいことはある?
成長に関する質問
- 最近学んだこと、気づいたことはある?
- 前回のネクストアクションはどうだった?
- 成功体験があれば教えてほしい。何がうまくいった要因だと思う?
- 失敗から学んだことがあれば聞かせてほしい
- フィードバックしてほしいことはある?
「話すことがない」を防ぐ仕組みづくり
1on1を何回か繰り返すと、「特に話すことがない」という状態が発生しがちです。これは1on1の価値が低下しているサインではなく、仕組みの問題であることがほとんどです。
対策1: 事前アジェンダシートの活用
テーマのカテゴリ(業務・キャリア・コンディション・成長)をあらかじめシートに記載しておき、部下が事前にチェックを入れる形にします。白紙の状態から考えるより、選択肢がある方がテーマを出しやすくなります。
対策2: 前回の振り返りから始める
「前回話したあの件、その後どうなった?」という問いかけは、対話の起点として有効です。前回の記録が残っていれば、自然と話の糸口が見つかります。
対策3: 「最近うれしかったこと・困ったこと」から入る
シンプルですが効果的な質問です。ポジティブ・ネガティブ両方を聞くことで、業務の話題だけでなく、パーソナルな側面にも自然にアクセスできます。
効果が出る1on1にするための7つのポイント
1on1ミーティングを「やっている」だけでは効果は出ません。成果につなげるための具体的なポイントを解説します。
上司が意識すべき「聴く技術」
1. 傾聴に徹する
「聴く」と「聞く」は違います。傾聴とは、相手の言葉だけでなく、感情や意図まで理解しようとする姿勢です。部下が話しているとき、次に何を言おうか考えるのではなく、相手の言葉に全意識を向けます。
2. オープンクエスチョンを使う
「はい/いいえ」で終わる質問(クローズドクエスチョン)ではなく、「どう思う?」「なぜそう感じた?」のように、自由に答えられる質問を投げかけます。部下の思考を引き出し、内省を促す効果があります。
3. 沈黙を恐れない
部下が考え込んで沈黙する瞬間は、実は最も価値のある時間です。上司が焦って話題を変えたり、答えを示唆したりすると、部下の思考プロセスが中断されてしまいます。3〜5秒の沈黙は待ちましょう。
4. 承認とフィードバックを使い分ける
「承認」は存在や行動そのものを認めること。「フィードバック」は改善点を伝えること。1on1では、まず承認から入り、フィードバックは部下が求めたときに行うのが原則です。
頻度・時間・場所の最適解
頻度: 週1回〜隔週がベスト
月1回では間隔が空きすぎて、対話の連続性が失われます。逆に毎日では負荷が高すぎる。多くの企業が効果を実感しているのは、週1回30分、または隔週30分のペースです。
時間: 15〜30分を厳守
1on1は短い時間で定期的に行うことに価値があります。60分の1on1を月1回やるよりも、15分の1on1を毎週やる方が効果的です。時間が来たら終了する規律を守ることで、対話の密度が上がります。
場所: リラックスできる環境を選ぶ
会議室のフォーマルな雰囲気は1on1には向きません。カフェスペース、オープンな休憩エリア、あるいはオンラインでカメラオフにするなど、部下がリラックスして話せる環境を意識しましょう。セッション設計の工夫を取り入れることで、場の質はさらに向上します。
継続のための仕組み化とツール活用
5. カレンダーにブロックする
1on1の最大の敵は「忙しいからスキップ」です。定例ミーティングとして固定の時間帯をカレンダーに入れ、原則としてキャンセルしないルールを設けます。上司から頻繁にリスケすると、「自分の時間は重要視されていない」というメッセージになります。
6. 記録を蓄積する
毎回の1on1の要点とネクストアクションを記録します。蓄積された記録は、部下の成長の軌跡そのものです。3か月後、半年後に振り返ったとき、「あのとき悩んでいたことが今は解決している」という成長の可視化が、部下のモチベーションを高めます。
7. 定期的に1on1自体を振り返る
四半期に一度くらいのペースで、「この1on1の時間は役に立っている?」「進め方を変えたいことはある?」と部下に聞いてみましょう。1on1の進め方そのものを改善し続けることが、形骸化を防ぐ最大のポイントです。
1on1が失敗する典型パターンと対処法
1on1ミーティングを導入したものの、期待した効果が得られない——そんなケースには共通のパターンがあります。
形骸化する3つの原因
原因1: 「業務報告会」になっている
上司が「あのタスクどうなった?」「今週の進捗は?」と質問を連発すると、1on1は業務報告会に変わります。部下は「報告しなければ」というプレッシャーを感じ、本音を話す余地がなくなります。
→ 対処法: 業務の進捗確認は別の場(朝会やチャット)で行い、1on1では「業務の話もOKだが、それ以外のテーマも歓迎」という空気を作る。
原因2: 上司が話しすぎる
上司が自分の経験やアドバイスを延々と語る1on1は、部下にとって苦痛でしかありません。「聴いてもらえる時間」のはずが「説教される時間」になった瞬間、部下の心は閉じます。
→ 対処法: 自分の発話時間を意識的に計測する。タイマーアプリを使い、8割以上部下が話している状態を目指す。
原因3: キャンセルが常態化している
「今日は忙しいからスキップしよう」——これが2回、3回と続くと、部下は「自分との対話は優先順位が低い」と受け取ります。信頼関係の構築どころか、むしろ関係を悪化させるリスクがあります。
→ 対処法: キャンセルは月に1回まで。どうしても無理な場合は、同じ週の別の時間に振り替える。部下側からのキャンセルは柔軟に受け入れる。
部下が本音を話せない状況の打開策
1on1で部下が表面的な話しかしない場合、それは部下の問題ではなく、環境の問題です。
まず上司から自己開示する。自分の失敗談、迷っていること、プライベートの話題。上司が先に弱みを見せることで、部下も「この人になら話しても大丈夫」と感じるようになります。
反応を予測可能にする ことも重要です。部下が問題を報告したとき、上司が毎回怒ったり、すぐに解決策を押しつけたりすると、部下は「余計なことを言わないでおこう」と学習します。どんな話を聞いても、まず「教えてくれてありがとう」と受け止める習慣をつけましょう。
評価と切り離す ことを繰り返し伝えるのも効果的です。「ここで話したことが評価に影響することはない」と明言し、実際にその約束を守り続けることで、少しずつ信頼が積み上がっていきます。
1on1の記録と振り返りで成果を最大化する

1on1の効果を最大限に引き出すには、「対話して終わり」ではなく、記録と振り返りの仕組みが不可欠です。
記録の残し方と振り返りの頻度
1on1の記録には、最低限以下の3項目を含めます。
- 話したテーマ: どのカテゴリの話をしたか(業務・キャリア・コンディション等)
- 要点: 部下が話した内容の要約(部下の言葉をそのまま使う)
- ネクストアクション: 次回までに部下がやること、上司がやること
振り返りのタイミングは、月次 と 四半期 の2段階がおすすめです。月次では直近4回分の1on1を振り返り、ネクストアクションの達成状況を確認します。四半期では、テーマの傾向や部下の変化を俯瞰し、成長の軌跡を部下と共有します。
音声記録×AIで1on1をナレッジ資産に変える
テキストメモによる記録には、2つの限界があります。
ひとつは 対話への集中が妨げられる こと。メモを取りながら傾聴に徹するのは、実際にはかなり困難です。ペンを走らせている間、上司の意識はメモに向かい、部下の表情や声のトーンの変化を見逃してしまいます。
もうひとつは ニュアンスが消える こと。テキストに落とした瞬間、声の抑揚、言葉の間、感情の機微が失われます。「大丈夫です」という同じ言葉でも、声のトーンによって意味はまったく異なる。テキストメモではこの違いを捉えられません。
音声で記録を残し、AIが自動で文字起こし・要約する方法であれば、この2つの課題を同時に解決できます。上司は対話に集中し、記録はテクノロジーに任せる。対話のニュアンスは音声として保存され、要約テキストとあわせていつでも振り返れる。こうした音声をナレッジとして蓄積する仕組みは、1on1の価値を飛躍的に高めます。
まとめ — 1on1ミーティングを組織の文化にするために
1on1ミーティングは、特別なスキルや大掛かりな仕組みがなくても始められます。週に15分、部下の話を聴く時間を確保する。たったそれだけのことが、信頼関係を築き、離職を防ぎ、組織全体の成長を加速させる起点になります。
ただし、効果が出るまでには時間がかかります。最初の1〜2回で劇的な変化は起きません。3か月、半年と続ける中で、部下の発言量が増え、相談の質が変わり、自発的な行動が増えていく。その変化は目に見えにくいものですが、確実に組織の力になっています。
大切なのは、完璧を目指さないことです。うまく聴けなかった日もある。話が盛り上がらなかった回もある。それでも、「あなたのための時間を毎週確保し続けている」という事実そのものが、何よりも強いメッセージになります。
まずは来週、15分の1on1を1人の部下と始めてみてください。